別荘地「虫食い」から守れ 軽井沢相続税の物納増える

 別荘地の代名詞ともいえる長野県軽井沢町でちょっとした異変が起きている。富裕層に代わって国が所有する土地が増えているのだ。相続税の物納増加が原因だ。買い手がつかず放置されれば別荘地が虫食い状態になってしまう。明治以降、外国人らを引きつけてきた日本有数の避暑地の景観は守られるのか。町も国の「全国都市再生モデル調査」などを利用して対策に乗り出した。


 「国有地 照会先 財務省関東財務局」─。軽井沢の別荘地では最近こうした看板が目立つ。倒木が敷地を覆い、建物が壊れ、門柱だけが残るなど雪深い中でも荒れ具合が目につく。
 相続税としてお金の代わりに国に納められた物納物件だ。関東財務局が実施する一般競争入札で売却されるはずだが、「過去数年にわたって売れ残った物件がたまり、面積が増えてきた」(軽井沢町企画財政課)。昨年十月時点で入札の対象となっていた物件は五十五件、合計面積は二十一万千五百四平方メートルに上る。
 「行政として何らかの対策が打てないか」。佐藤雅義軽井沢町長が恐れているのは、長期間放置で別荘地が虫食い状態になることだけでなく、マンション建設用地などの目的で買い占めが進むこと。町は長野県からの強い要請を受けたこともあり、国の「全国都市再生モデル調査」に応募することを決めた。昨年六月には「別荘地内の未利用国有地の再生にかかわる景観・環境形成モデル調査事業」として採択された。
 実際の事業は町の助言役でもある建築家(マスターアーキテクト)、團紀彦氏の事務所が請け負う。一つひとつの物件の状況や競売の結果を具体的に調査しながら、今年三月までに国有地の処分方法で新たな入札制度を提言する考えだ。
 團氏は「軽井沢という場所の特殊性をどのようにとらえるかが極めて重要。国有地の早期売却にも寄与しながら、環境形成にも貢献する人が落札できる入札の制度改革が必要」と話す。事前に利用意図や設計図などを提出したうえでの入札制度などが候補に挙がる。
 別荘建築の調査や保存を手がける「軽井沢ナショナルトラスト」の中島松樹会長は「所有者が価値を知らぬまま壊してしまう別荘もある」と嘆く。団体を立ち上げてから十年、三月末までにこれまで進めてきた建物やその所有者についての調査の概要をまとめる。
 「軽井沢に来る人は周囲とは接点を持ちたくない人も多い」といい、調査は簡単には進まなかった。ただ「建物はいったん壊れてしまったら終わり。まずは価値を広く知ってもらうことで『生きた博物館』の保存につなげたい」という。佐藤町長も気持ちは同じ。「個人の別荘にはなかなか指導できないが、良質な別荘文化はなんとしても残したい」と力を込める。
行政と住民がそれぞれの立場で軽井沢の景観を守る工夫を探っている。

2005年1月28日 朝日新聞

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